
困窮状態(老齢、障害、物質的貧困など)を予防ないし除去することを目的とするものであり、公的扶助、障害者福祉、児童福祉、高齢者福祉などがこれに属する。
高齢者対策としては、家事援助、食事援助、在宅看護等の在宅サービス、「カーサ・ディ・リポーゾ(休養ホーム)」等数種類の施設類型からなる施設サービス、ソーシャル・センター、老人大学等の社会参加促進などが実施されている。70年代の権限委譲により、福祉分野の立法や計画は各州の管轄とされたため、全国レベルでの立法や計画は存在していない。イタリアの社会・経済は、南北差に代表されるように地域格差が大きいため、それを反映して高齢者対策にも大きな地域差がある。
海洋性レクリエーション施設に関しては、特別な法律や計画が制定されている訳ではなく、社会的要請や地域の事情によって独自の展開がなされているが十分ではない。一般に地中海に面したビーチは、海浜幅も狭く小規模であるため、バリアフリーについてあまり考慮されていない。しかし、アドリア海に面したマリン・リゾート地は、海浜幅も広く大規模な海水浴場を有しているため、さまざまな施設でバリアフリーが考慮されている。
海浜に立地しているホテルから海岸通りを挟むビーチまでのアクセスには、障害者専用信号やサインがあり、また、海岸通りの駐車場にも道路面及び道路標識に障害者サインが示されている。さらに、海辺のプロムナードから後浜へのアプローチにも、車椅子専用スロープが至るところに配備されている。数キロメートルにわたる海水浴場には、ホテルやレストラン、あるいは個人が経営するビーチバット(日本の海の家と異なり、着替え場所を提供する小規模なロッカールーム)の群れが点在している。このビーチバット群には、必ずシャワー施設やトイレが付属しており、これらにも障害者に配慮した施設設計がなされている。また、アドリア海に面したビーチは、渚までの距離が数百メートルに及ぶところが多いため、ビーチバット群から渚まで車椅子が通れるように敷板が配置されている。しかし、マリーナについてはほとんど考慮されていないのが現状である。
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